2024年03月04日
なぜ若者は海辺の床屋を訪れたのか?
不覚にも涙がこぼれてしまいました。
小説を読んで泣けたのは、久ふりのことでした。
小説を読むならば、長編と決めていました。
なぜならば、むらっけの多い、飽きっぽい性格だからです。
集中力が途切れると、他のことに興味が行ってしまうのです。
だから短編集には、苦手意識がありました。
荻原浩という作家が書く小説が好きでした。
“でした” というのは、もう何年も読んでいなかったからです。
1997年、『オロロ畑でつかまえて』 でデビュー。
この作品で第10回小説すばる新人賞を受賞しました。
この本を機にファンになり、『コールドゲーム』 『噂』 『あの日にドライブ』 などを立て続けに読んだ記憶があります。
でも、なぜか、その後は読んでいません。
だから2016年に 『海の見える理髪店』 で第155回直木賞を受賞したときも、本を手に取ることはありませんでした。
短編だったからかもしれません。
先日、時間つぶしに、ぷらりと入った古書店で、『海の見える理髪店』 を手に取りました。
「読んでないけど、これ短編なんだよな……」
なんて一人ごちながらも、気が付いたら他の数冊の本とともにレジに向かっていました。
舞台は海辺の小さな町にある理髪店。
ここに一人の若い男がやって来ます。
「髪型はお任せします」
老店主は、ハサミを動かしながらも問わず語りに、自分の人生を語り出します。
家業の床屋を10歳で手伝い始めたこと。
父親の死後、継いだ店は順調だったが、やがて傾き出し、酒におぼれていったこと。
自暴自棄になり、妻に暴力を振り、離婚されたこと。
なぜ、老店主は、若者にそんな話をするのか?
なぜ、若者は遠く離れた海辺の町まで散髪にやって来たのか?
ミステリアスなストーリー展開に、読み手は知らずのうちに謎解きを始めてしまいます。
が!
ラストで思いもよらぬ事実が明かされます。
それを知った時、涙腺が一気に破壊されてしまいました。
興味をいだいた方は、一読されたし。
Posted by 小暮 淳 at 12:03│Comments(2)
│読書一昧
この記事へのコメント
ありがとうございます!
次に何を読もうかなあと考えていたところでした。
次に何を読もうかなあと考えていたところでした。
Posted by まいちゃ at 2024年03月04日 15:32
まいちゃさんへ
読んでみて肌に合ったら、他の作品も読んでみてください。
読んでみて肌に合ったら、他の作品も読んでみてください。
Posted by 小暮 淳
at 2024年03月04日 23:11
