2020年02月13日
終われない人
<定年って生前葬だな。>
そんなショッキングな書き出しから物語は始まります。
遅ればせながら、映画にもなり大ヒットした内館牧子著 『終わった人』(講談社文庫) を読みました。
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられ、そのまま定年を迎えた63歳の男が主人公です。
まだ60代は、頭も体も元気だ。
なのに、ある日突然、“終わった人” となってしまう。
それが 「定年」 だという。
仕事一筋だった彼は途方に暮れ、生きがいを求め、居場所を探して、迷い惑い、あがき続けます。
彼と僕は同世代。
ただ違うところは、僕は 「定年」 のない人生を送っています。
それでも読んでいて、他人事とは思えないんですね。
家族や社会から、だんだんに “不要” とされているんではないかという恐怖心はありますから……。
著者は、あとがきで、こんなことを書いています。
<定年を迎えた人たちの少なからずが、「思いっきり趣味に時間をかけ、旅行や孫と遊ぶ毎日が楽しみです。ワクワクします」 などと力を込める。むろん、この通りの人も多いだろうが、こんな毎日はすぐに飽きることを、本人たちはわかっているはずだ。だが、社会はもはや 「第一線の人間」 として数えてはくれない。ならば、趣味や孫との日々がどれほど楽しみか、それを声高に叫ぶことで、自分を支えるしかない。>
こういう男を主人公にした小説を書きたいと思ったといいます。
でも、ちょっと、待って!
そのイメージって、かなり “老人” なんですよね。
そして、そこが問題なんです!
イメージと現実のギャップに、60代は苦しんでいるわけです。
小説を読み終わって感じたことは、ひとこと 「うらやましい」 であります。
確かに、やる事のない日々は苦痛かもしれないけど、それでも生きてはいられるのですから。
世の中には、終わっても生きていける人と、終わった時点で生前葬ではなく、本葬が待っている人がいるということです。
悲しいかな、僕は後者です。
内館さん、ぜひ続編は、『終われない人』 を書いてください。
Posted by 小暮 淳 at 12:00│Comments(2)
│読書一昧
この記事へのコメント
女バージョンも検討していただっきたい
いくつになっても突っ走る女もいるわけで、でも男性の方が絵になるし売れるのかな本が
弟子入りした先生には
「温泉県のために動けばいい」 「母親以外の仕事がある」
と咤激励していただき、目標は専業主婦ですとなかなか言いずらい日々(笑)
いくつになっても突っ走る女もいるわけで、でも男性の方が絵になるし売れるのかな本が
弟子入りした先生には
「温泉県のために動けばいい」 「母親以外の仕事がある」
と咤激励していただき、目標は専業主婦ですとなかなか言いずらい日々(笑)
Posted by ぴー at 2020年02月14日 11:32
ぴーさんへ
ですよね。
圧倒的に女性のほうが “終われない人” が多いと思います。
ぴーさんが目標とする専業主婦だって、エンドレスの人生です。
僕の夢は、温泉の中で息絶えることです。
その時は、温泉葬でお願いします。
ですよね。
圧倒的に女性のほうが “終われない人” が多いと思います。
ぴーさんが目標とする専業主婦だって、エンドレスの人生です。
僕の夢は、温泉の中で息絶えることです。
その時は、温泉葬でお願いします。
Posted by 小暮 淳
at 2020年02月15日 10:57
