2020年05月27日
一湯良談 (いっとうりょうだん) 其の十二
『湯守が守り続けるもの』
何軒も宿のある温泉地では、1つの源泉から各宿へ分湯している場合が多いので、必ずしも宿の主人が湯の管理をしているとは限らない。
しかし一軒宿と呼ばれる小さな温泉地のほとんどは、自家源泉を保有しているので、湧出地から温泉が宿の浴槽へたどり着くまでの一切の面倒を宿の主人が見ている。
読んで字のごとく、「湯守(ゆもり)」 のいる宿である。
法師温泉(みなかみ町) の一軒宿 「長寿館」 は、全国でも1%未満という浴槽直下の足元から源泉が湧く珍しい温泉。
足元湧出温泉は、湧き出した湯が直接、人肌に触れるため、熱過ぎても、ぬる過ぎても存在しない。
なかでも入浴に適温とされる41~42度の源泉が湧出する温泉は、まさに “奇跡の湯” だ。
宿の創業は明治8(1875)年。
同28年に建てられた鹿鳴館風の湯殿は、本館、別館とともに国の登録有形文化財に指定されている。
「温泉とは雨や雪が融けて地中にしみ込み、何十年という月日をかけてマグマに温められて、鉱物を溶かしながら、ふたたび地上へ湧き出したものです。でも地上へ出てきてからの命は、非常に短い。空気に触れた途端に酸化し、劣化が始まってしまう。湯守の仕事は、時間との闘いです。いかに鮮度の良い湯を提供するかなんです」
と6代目主人の岡村興太郎さん。
法師温泉の源泉は、約50年前に降った雨が湧き出しているという。
「湯守は、温泉の湧き出し口(泉源) だけを守っていればいいのではない。もっとも大切なのは、温泉の源となる雨や雪が降る場所。つまり、宿のまわりの環境を守ることです」
周辺の山にトンネルや林道などの土木工事をされれば、湯脈を分断される恐れがある。またスキー場やゴルフ場ができれば、森林が伐採されて山は保水力を失い、温泉の湧出量が減少する。
いい温泉は、いい湯守により、代々守り継がれているのである。
<2013年4月>
Posted by 小暮 淳 at 11:05│Comments(2)
│一湯良談
この記事へのコメント
法師はいつ行っても素敵ですね。
Posted by 温泉大好き at 2020年05月28日 12:26
温泉大好きさんへ
まさに群馬の “キング オブ 温泉” ですね。
22世紀の世にも残せるよう、我々で守らなければならない誇るべき温泉遺産だと思います。
まさに群馬の “キング オブ 温泉” ですね。
22世紀の世にも残せるよう、我々で守らなければならない誇るべき温泉遺産だと思います。
Posted by 小暮 淳
at 2020年05月28日 23:02
