2020年06月29日
温泉考座 (3) 「日帰り施設の危機」
「平成」 になって以降、平野部や都市部に急増した日帰り温泉施設の源泉が、涸渇し始めているようです。
自然湧出の温泉なら降った雨が地中で温められ、地表に噴出するという循環を繰り返しており、涸れることはありません。
では、なぜ日帰り温泉の源泉は涸渇するのでしょうか?
これは温泉法の温泉の定義と無関係ではありません。
温泉法では、湧出口の温度が25度以上あるか、特定成分を規定量以上含むものは、すべて 「温泉」 と認められます。
つまり、特定の成分が含まれていなくても、温度が25度以上あれば、温泉と認められるわけです。
仮に地表の平均温度を15度とします。
地下は100メートル掘るごとに、地熱で水温が約3度上昇しますから、1,000メートル以上掘れば40度以上の地下水をくみ上げることができます。
これを 「地温上昇率」 といいます。
地下には大昔に地層に閉じ込められた 「化石海水」 もあります。
これらの非火山性温泉は、ほとんど循環しないため、湯量に限りがあります。
その湯量の限界が、約20年とも30年ともいわれています。
町おこしのため、市町村に一律に1億円を配る竹下内閣の 「ふるさと創生資金」 がきっかけとなって、全国で温泉掘削が行われたのですから、そろそろ涸渇を迎える施設が出てきても、おかしくない話です。
日帰り温泉施設の危機は、温泉の涸渇だけとは限りません。
温泉をくみ上げるパイプにスケールが付着し、地中で目詰まりを起こしてしまうこともあります。
「スケール」 とは、温泉の成分が酸化し、不溶性の析出物となって堆積したものです。
昨年、群馬県内の日帰り温泉施設で、同様のトラブルが起きました。
約1,000万円を投じて除去工事を行いましたが、湯量は戻りませんでした。
さらに深い所に堆積物があることが分かりましたが、それを除去しても湯量が回復する確証がないとして、工事続行を断念したと報じられています。
何千メートルと地下を掘削して、温泉を涸渇させてしまう人間。
そんな人間の愚行に、温泉の神様が怒り出さなければ、良いのですが……。
<2013年4月17日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:03│Comments(0)
│温泉考座