2020年10月23日
温泉考座 (39) 「本当の豊かさとは?」
「お客が変わった」
戦前から商いを続けている老舗旅館に話を聞くと、必ず返って来る言葉です。
昔の客は 「泊めていただく」、今の客は 「泊まってやる」 なのだそうです。
「温泉が、ありがたかった時代の話ですよ」
そう言ったご主人がいました。
背景には、高度成長期以降の温泉地の変貌があります。
その昔、「温泉へ行く」 といえば “湯治” のことですから、客はすべて長期滞在者でした。
自ら食糧を持ち込み、自炊をしながら何日も過ごします。
ですから湯と床を提供してくれる宿に対して、「泊めていただく」 という感謝の気持ちがありました。
しかし、1泊2食の宿泊が主流となった現在、温泉地は日常のストレスを発散する観光地となってしまいました。
客は “上げ膳据え膳” の食事と、“お殿様あつかい” される過剰サービスに優越感を求めるあまり、「泊まってやる」 という横柄な態度になったといえます。
平成以降に増えた日帰り温泉施設が拍車をかけました。
わざわざ遠い山奥まで行かなくても、街の中で温泉に入れるようになったからです。
「温泉があるだけでは客はやって来ない」 と旅館やホテルは、ますます料理やサービス、設備に力を入れ、温泉以外の付加価値を売り物にするようになりました。
“湯が神様” だった時代は、はるか昔のこと。
今では “客が神様” へと主客転倒してしまいました。
「露天風呂がない」 「貸切風呂がない」 「洗い場にシャワーがない」 「部屋にエアコンがない」 「川の音がうるさくて眠れない」 「館内に虫がいる」 ……。
そんなクレームの嵐に、秘湯の宿から悲鳴が聞こえてきます。
「質素な料理でも長期滞在をしながら、のんびりと湯を浴(あ)んでいた時代と、1泊で豪華な料理をお腹いっぱい食べて、翌日には帰ってしまう現代と、どちらが豊かなんでしょうね?」
そう言った女将さんがいました。
本当の豊かさとは?
温泉地の変遷を通して、おぼろげながら答えが見えてくるようです。
<2014年2月19日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:01│Comments(2)
│温泉考座
この記事へのコメント
マロパパ先生
本当の豊かさとは・・?さいごの部分とか、ミヒャエル・エンデの「モモ」を思い出していました。。(._.)
時間泥棒は、どんどん横行していくのですねー。気をつけねば!
そして、先生の先日のブログにもあった「不機嫌なひとたち」は、時間泥棒の横行と比例して増えるような気がしています・・・(´・ω・)
今後も、時間泥棒から逃げ回りながら、のんびり湯治の旅を続けたいものです。。(=^・^=) と思いました☆
本当の豊かさとは・・?さいごの部分とか、ミヒャエル・エンデの「モモ」を思い出していました。。(._.)
時間泥棒は、どんどん横行していくのですねー。気をつけねば!
そして、先生の先日のブログにもあった「不機嫌なひとたち」は、時間泥棒の横行と比例して増えるような気がしています・・・(´・ω・)
今後も、時間泥棒から逃げ回りながら、のんびり湯治の旅を続けたいものです。。(=^・^=) と思いました☆
Posted by ムク at 2020年10月23日 11:38
ムクさんへ
“時間泥棒” とは、うまい表現ですね。
現代において、時間を持っている人が、一番豊かなのかもしれませんね。
きっとみんな、時間がない分、それを補おうとして、お金で満足を買っているのですね。
“時間泥棒” とは、うまい表現ですね。
現代において、時間を持っている人が、一番豊かなのかもしれませんね。
きっとみんな、時間がない分、それを補おうとして、お金で満足を買っているのですね。
Posted by 小暮 淳
at 2020年10月23日 18:13

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