2023年04月23日
チャンコロリンは忘れた頃にやって来る!
先日の講演会場にて。
「先生には以前、一度お会いしたことがあります」
講演終了後、著書を購入してくださった方から話しかけられました。
恰幅のいい、スキンヘッドの中年男性です。
「取材を受け、一緒にテレビに出演しました」
「……?」
記憶をたどってみますが、思い出せません。
ところが次のひと言で、この男性が誰か、瞬時に思い出しました。
「チャンコロリン石で……」
「ああ、あの時の住職ですか!」
チャンコロリンとは、“妖怪チャンコロリン” のことです。
今から約200年ほど昔のこと。
中山道の宿場町で栄えた安中で、夜な夜な草木も眠る丑三つ時になると、「チャンコロリン、チャンコロリン」 と音を立てて大きな石が街道を転がるため、人々は雨戸を閉ざし、恐ろしさに震えていました。
旅人も気味悪がって、安中宿に泊まらなくなってしまったため、安中藩の侍が、刀や槍、弓矢、鉄砲で立ち向かったのですが、一向に効果はありませんでした。
困り果てた町人たちは、大泉寺の和尚の法力にすがりました。
和尚が転がる石に向かって法を唱えると、さしもの妖怪も寺の台座の上で動かなくなったといいます。
※(詳しくは拙著 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』 参照)
も、も、もしかして~!
あの妖怪チャンコロリンが、法力が解けて200年の眠りからよみがえったのではないか?
そのことを知らせに住職は、わざわざ僕の講演会場まで来てくれたのではないか?
あの時、妖怪チャンコロリンを法力により台座の上に封じ込めたのは、大泉寺十三代目住職の獅絃(しげん)和尚でした。
もし今また、妖怪チャンコロリンが暴れ出したら?
同じ法力を使えるのは、今僕の目の前にいる二十四代目の現住職しかいません!
「お願いします! チャンコロリンを鎮めてください。さもないと安中の町は壊滅してしまいます。いや、その被害は群馬全域に広がるかもしれないのです。お願いします! あなたの法力にすがるしかないのです」
と、ここで僕は妄想から現実へ戻りました。
「今日は、いいお話をありがとうございました」
そう住職は言って、会場を出て行かれました。
ふぅーーーーーっ!
と長い溜息を一つ。
よかった、何事もなくて。
でも油断は禁物です。
いつなんどき妖怪チャンコロリンは、目を覚ますか分かりません。
チャンコロリンは、我々人間が忘れた頃にやって来ます。
Posted by 小暮 淳 at 11:45│Comments(2)
│謎学の旅
この記事へのコメント
恰幅のいいスキンヘッドの中年男性、ドキッとします笑
Posted by みわっち at 2023年04月25日 21:15
みわっちさんへ
僕も一瞬、みわっちさんかと思いました(笑)
僕も一瞬、みわっちさんかと思いました(笑)
Posted by 小暮 淳
at 2023年04月25日 23:16
