温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2024年03月29日

遭わなかった小学生


 テレビのニュースやワイドショーで、大谷翔平を見ない日はありません。
 大谷選手本人の活躍もさることながら、このところもっぱらの話題は、元通訳のスポーツ賭博をめぐる問題です。

 “ギャンブル依存症”

 言葉は知っていても、麻薬依存症同様、身近にはいません。
 でも、ギャンブル依存症は、日常生活や社会生活に支障が生じ、治療を必要とする病気なんですね。


 依然、僕がスマホを持っていないからでしょうか?
 僕から見れば、スマホをいじっている人は、すべて依存症に見えてしまいます。

 実際に依存症にかかってしまった人も多いらしく、“スマホ断ち” を行っている人が増えているそうです。
 先日、テレビでやっていたのは、山奥の電気がなくランプで過ごす一軒宿にやって来る若者たちの実態。
 その目的とは?

 「電気と電波のない環境に身を置かないと、スマホ断ちができないから」
 とのことでした。


 そんなスマホ依存症は、スマホの普及とともに低年齢化を招いています。
 数日前の新聞に、ショッキングな記事を見つけました。

 ≪SNS原因 児童被害139人≫
 ≪23年最多 大半が性犯罪≫


 警視庁は、2023年にネット交流サービス(SNS)のやり取りをきっかけに犯罪の被害に遭った小学生が139人(前年比25人増)だったと発表しました。
 統計のある2008年以降で最多となり、2013年(28人)の約5倍に増えたと報じています。
 警視庁によれば、小学生のスマホの利用率が高くなっていることが背景にあるとのことです。

 内閣府の調査によると、小学生のスマホの利用率は2018年度の45.9%から、2022年度には59.5%に上昇。
 現在の利用率は、それ以上になっています。


 アナログ派の僕には、まったくもって訳が分かりません。
 スマホを持っている皆さんには、なぜ小学生が性犯罪の被害者になってしまうかが、分かるんでしょうね。

 新聞によれば、“出遭い” は、こうでした。
 <被害に遭った小学生のうち、94人は自身の投稿をきっかけに加害者と知り合っていた。>
 <知り合ったSNSなどはティックトックやインスタグラムが多いが、オンラインゲームの割合も中高生らを含めた全体(5.3%)より高い18.0%だった。>

 年齢別の被害では11~12歳が最も多く、犯罪の種類別では「児童ポルノ」 「不同意性交等」 「不同意わいせつ」 の順に多く、この3つで約8割を占めています。
 スマホがなかったら、犯罪に遭わなかった小学生たちです。


 いやはや、令和という時代は訳が分かりません。
 昭和人間には、世の中がハイテク過ぎて、ついていけないのです。

 でも、犯罪は犯罪です!
 どんなに便利になろうが、子どもたちの安全は、大人たちが守ってやるしかないのです。


 あなたはスマホ依存症、大丈夫ですか? 
   


Posted by 小暮 淳 at 10:46Comments(0)つれづれ

2024年03月28日

浴室に浮かぶキツネの姿


 猿ヶ京温泉 (みなかみ町) には、こんな民話があります。

 <昔、旅の夫婦が大きな空き家に、一夜の宿を借りてから、そこに男の子が現れるようになりました。奥さんが、その男の子と遊んであげると、男の子は 「奥の座敷の床下を掘ってください」 と言いました。言われたとおり夫婦が掘ってみると、なんとそこには、大判小判の入った金瓶が埋まっていました。その後、夫婦はその家で暮らすようになり、座敷わらしに似た可愛い男の子をもうけ、末永く幸せに暮しました。>
 (『座敷わらしの家』 より)


 僕は2018年に 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) という著書を出版しました。
 この本は、高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 の2007~18年に連載されたシリーズに加筆・訂正を加えたものです。
 出版後、しばらくシリーズは休載していましたが、昨年12月より 『続・民話と伝説の舞台』 として、不定期ながら連載が再開しました。

 ということで、新シリーズの取材で猿ヶ京温泉へ行ってきました。
 訊ねたのは、民話に登場する夫婦から数えて19代目になるという子孫が経営する旅館です。

 今でも旅館には、宿泊客から座敷わらしの目撃話が多く寄せられています。


 「これを見てください」
 取材開始早々、ご主人は何冊ものノートを持ってきました。

 “自由画帳”

 このノートには、宿泊客が書いたたくさんの感想が残されています。
 当然、座敷わらしの目撃例も。
 男の子を見た。女の子を見た。羽の生えている子もいた……


 しばらくは、ご主人と座敷わらし談議で盛り上がっていました。
 すると突然、
 「あっそうだ! こんな書き込みもあるんですよ」
 と、ご主人は一番新しいノートを開きました。
 日付は、今年の1月です。


 <浴室の窓にキツネが現れました>

 若い女性のようで、イラストも描かれています。
 大きな窓の中に立っている、鼻と耳がとがったキツネの絵です。


 「で、これを見てください!」
 ご主人は、タブレットを差し出しました。
 「この書き込みを見て、すぐに浴室へ行ったんですよ。そしたらキツネの姿が、残っていたんです」

 タブレットの画面には、女湯の内風呂から外を写した写真が、数点ありました。
 「ほら、これ! キツネでしょう!」


 一瞬、僕の背中に、冷たいものが通り抜けました。
 まさに、ノートに書かれていたイラストそのものでした。

 内風呂と露天風呂の間にある大きなサッシ窓。
 外気との温度差により、内側は結露して無数の水滴が付いています。
 その水滴が、見事にキツネの姿を描いているのです。

 「本当ですね。これは誰が見てもキツネに見えます」
 「でしょう! 見に行きますか?」
 「えっ、いつでも見られるんですか?」
 「わかりません。今日は休館日で湯を張ってないから、出ないかもしれませんけど……」


 ご主人に案内されて、浴室へ。
 でも、やはりキツネの姿はありませんでした。


 座敷わらしとキツネ
 なにか関係があるのでしょうか?

 謎学の旅は、つづく。
  


Posted by 小暮 淳 at 10:18Comments(0)謎学の旅

2024年03月26日

徳積貯金


 彼岸に墓参りをしたからでしょうか?

 なんだか、このところ毎日が、トントン拍子に進んでいます。 
 会いたいと思っていた人と偶然に会ったり、疎遠で連絡を取りたいと思っていた人から突然電話が来たり、なかなか予約が取れない歯医者の予約が希望日に取れたり……。
 キャンセルになった日に、すぐさま別の仕事の依頼が入ったこともありました。
 偶然に偶然が重なって、3日かかる取材が1日で済んだこともあります。


 ここまで運気が上昇すると、怖いくらいです。

 でも、死んだオフクロなら、こんな時、こう言うんでしょうね。
 「今まで徳を積んできたからだよ」 と。


 晩年、オフクロは寝たきりの生活をしていました。
 ときどき僕は、実家に泊まり込み、食事や下の世話をしていました。
 そして、オフクロが起きている時はベッドの隣のイスに腰かけて、話し相手になりました。

 話し相手といっても、寝たきり老人ですからね。
 オフクロの話題は、読んだ本とラジオで聴いた話くらいなものです。
 もっぱら僕が、仕事で行った温泉の話や取材先での出来事などを話していました。

 ついつい、愚痴をこぼしてしまう時もありました。
 友人や家族にも言えないことも、なぜかオフクロには言えるんですね。


 やることなすことが、うまくいかない時は、必ず、こう言われました。
 「徳が足りないからだよ。もっと徳を積みなさい」
 そして、本の出版が決まったり、テレビやラジオに出演をした時など、いいことがあると、こう言うのです。
 「徳を積んできたからだよ。神様は、ちゃんと見ているんだからね」

 爾来(じらい)、僕は、どんな嫌なことが起きても、「今は徳を積んでいるんだ」 と思えるようになりました。


 でも、これだけ毎日がトントン拍子に進むと、この先が不安になります。
 いったい、あと、どれくらい積んだ徳は残っているのでしょうか?
 そろそろ、使い果たしてしまうのではないでしょうか?

 やがて、残高不足の知らせが来るようで、心配になります。


 かーちゃん、徳の積立貯金の残高って、どうすれば調べられるんだよ?
 そこんところ、教えてくなかったじゃねーか!

 なに?
 「そんな心配をする前に、コツコツと徳を積みなさい」
 ってか!?


 コツコツ、コツコツだね。
 わかったよ、かーちゃん!
 次は、5月の命日に報告に行くからね。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:54Comments(2)つれづれ

2024年03月25日

温泉郷の不思議


 【温泉郷】
 一定の範囲内に集まっている温泉または温泉街の総称。
 (ウィキペディアより)


 いったい、いつから、この言葉が使われるようになったのでしょうか?

 昭和32(1957)年、熊本本宮温泉郷が国民保養温泉地に指定されてから、一定の範囲に温泉地が複数集まったエリアを 「温泉郷」 とする表現が定着したといいます。
 また、最初に 「温泉郷」 という言葉を用いたのは、文豪の田山花袋だったとされています。
 大正7(1918)年に出版された著書 『温泉めぐり』 の中で、こう記されています。

 <塩原は有名な温泉郷である。>


 なので、「温泉郷」 と聞けば我々は、いくつもの温泉地が点在しているエリアをイメージしてしまいます。
 なのに群馬県内には、不思議な温泉郷が存在します。

 「老神温泉郷」


 国道120号の椎坂トンネルを抜けると、その看板が出てきます。
 “右、老神温泉郷”

 えっ、温泉郷?
 老神温泉って、1つじゃないの?

 誰もが一度は抱く疑問です。


 その理由は……?
 僕はかつて 『尾瀬の里湯』(上毛新聞社) という本を書いてますから、もちろん知っています。
 でも、県民のほとんどの人が知らないのではないでしょうか?

 ということで、僕がリポーターを務める群馬テレビ 『ぐんま!トリビア図鑑』 の人気シリーズ 「温泉大国ぐんま」 では、この謎を解明します。


 昨日、ディレクターと放送作家とともに、ロケハン (ロケーションハンティング) に行ってきました。
 老神温泉観光協会を訪ね、協会長や組合長らから貴重な話と、膨大な資料のコピーをいただいてきました。

 そこには、大火や水害に見舞われた温泉地の苦難、戦後の高度経済成長の波に翻弄された歴史がありました。
 温泉街を流れる片品川に架かる橋の上から川底をのぞき込めば、ダム建設に伴い水没した、かつての温泉街の姿が……


 湯の数だけ歴史があり、宿の数だけ物語があるのです。


 来月、ロケ。
 放送は5月中旬の予定です。
 ご期待ください。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:08Comments(4)テレビ・ラジオ

2024年03月23日

四万温泉 「四万やまぐち館」④


 なんだかんだと、このところ四万温泉(中之条町)づいています。
 また四万温泉へ行ってきました。
 しかも 「四万やまぐち館」 は、昨年11月に群馬県立歴史博物館の出前講座で訪れたばかりです。

 前回は日帰りでしたが、今回は公務の後、宿泊してきました。


 公務?
 はい、僕は中之条町観光大使と四万温泉大使を兼務しております。
 昨日は、中之条町役場にて、町長や教育長らとの意見交換会に出席してきました。

 僕のほかにも落語家のRさん、作家のSさん、音楽家のWさん、歌手のRさんら観光大使&ふるさとアドバイザーの面々が参加。
 1時間半にわたり、ディスカッションを楽しんできました。


 夕方、役場よりマイクロバスに乗って、一路、四万温泉へ。
 「四万やまぐち館」 にて開催される懇親会に出席するためです。

 宴会までは、たっぷり2時間あります。
 一人一部屋の贅沢な時間が始まりました。
 が、宴会まで待てませんって!
 ビールが呑みたい!

 すぐに呑むか? 我慢するか?
 我慢はできない。
 でも、できるだけ、うまいビールが呑みたい!

 ということで、浴衣に着替え、タオルを下げて、浴場へと向かいました。


 名物の 「お題目大露天風呂」 と 「渓流露天風呂」 は、男女入れ替え制。
 こちらは前回入っているので、パス。
 ていうか、到着時のロビーの混み方をみると、混雑が予想されます。

 ならばと、地味ではありますが、階下の 「檜大浴場」 へ。
 これが、ビンゴ!
 予想が的中しました。

 浴室へ入った時には、年配の男性が1人いましたが、すぐに出て行ったため、完全貸切状態です。
 ぬるめの浴槽と、やや熱めの浴槽を、行ったり来たり。
 まさに、“源泉ひとりじめ” 状態であります。

 ヒノキの香りと、かすかなる温泉臭が漂う中、たっぷりと至福の時間を満喫しました。


 湯上りは、缶ビールを手に、清流・四万川を眺めるラウンジを、これまた “ひとりじめ”。
 やがて訪れる、にぎやかな宴の前の静かなる飲酒のよろこび。

 もちろん、これが呼び水となり、本番では思う存分浴びて参りました。


 いゃ~、四万温泉って、いいですね!
 いゃ~、中之条町って、いいですね!
 みなさ~ん、 「花と湯の町 なかのじょう」 へ、いらっしゃ~い!!



 ここで問題です。
 「四万やまぐち館」 の玄関前にかかる大きな暖簾には、意味不明な文字が書かれています。

 △ 口 ○

 さて、なんと読むでしょうか?



 〈答え〉
 △=山(やま) 口=口(くち) ○=環(かん) 
  


Posted by 小暮 淳 at 13:07Comments(0)温泉地・旅館

2024年03月22日

光の鎖が見えますか?


 ある日突然、そのギザギザの光は現れました。

 視界の中に、変な形をした模様が光っています。
 キラキラと光る鎖(くさり)のような輝きです。

 ヘビのようにクネクネと曲がり、歯車のように角ばっています。


 その輝きは、眼球を動かして、視線を移しても追ってきます。
 試しに、目をつむってみましたが、やはり暗闇の中で、キラキラと光り輝いています。

 ん?
 なんだこれ?
 こりゃ、目の仕業じゃないな?
 もしかして、幻覚?


 ギザギザの光は、時間の経過とともに次第に大きくなっていきます。
 10分ほど経った頃でしょうか……
 やがて、視界の中から消えてなくなりました。

 はたして、この正体は? 


 「閃輝性暗点 (せんきせいあんてん)」 といいます。

 発生のメカニズムは、まだ解明されていない、謎の症状だといいます。
 視覚をつかさどる後頭葉 (脳の後ろ側) の血管が収縮や拡張するときに起こる現象のようです。

 頭痛の予兆だともいわれていますが、僕の場合、体調の変化はありません。


 2~3年前から年に1、2回現れるようになりました。
 気になって、周りの人に訊いてみると、かなりの人が同じ光の鎖を見ていることが分かりました。

 見たことのない人には、どんなモノなのか想像もつかないでしょうが、見たことがある人には、「あるある現象」 のようですね。


 あなたは、光の鎖を見たことがありますか?
   


Posted by 小暮 淳 at 10:09Comments(2)つれづれ

2024年03月20日

【速報】 「ささの湯」 営業再開とクラファンのお知らせ


 温泉ファンに朗報です!

 給湯ポンプの故障により営業休止となっていた幡谷温泉(片品村) 「ささの湯」 が再開しました。
 (2024年3月1日 「【緊急】 『ささの湯』 復旧支援金のお願い」 参照)


 修繕工事が終わり、無事にお湯が出たとのことです。
 昨日(3月19日)より、通常営業を開始しました。

 良かったですね!
 とりあえず、安心しました。


 が、まだまだ、みなさんの支援が必要です。
 復旧を優先にしたため、工事費はクラウドファンディングで募っています。
 引き続き、支援をお願いいたします。


●「ささの湯」 復旧支援クラウドファンディング
https://camp-fire.jp/projects/view/748204?argument=33pKQw5N&dmai=criteo&utm_campaign=criteo_dynamic&utm_medium=cpc&utm_source=criteo&cto_pld=rbp7OaquAACXwsr8y97ufQ


 原点回帰の湯 ささの湯 (幡谷温泉)
 群馬県利根郡片品村幡谷535
 TEL.0278-58-3630
  


Posted by 小暮 淳 at 10:49Comments(2)温泉地・旅館

2024年03月19日

What's your name?


 トン、トン

 夜遅く、ドアを叩く音がしました。
 こんな時間に、僕の部屋にやって来る人は、一人しかいません。
 次女です。

 「お入り。帰ってきてたのか?」
 「おとう、元気だった!?」
 と、いつものように元気いっぱいの娘が登場。
 手には、何か箱を持っています。

 「沖縄、行ってきた。はい、これ、お土産」


 次女は2年前から家を出て、県外で一人暮らしをしています。
 休みが取れたので、友だちと遊びに行ってきたようです。
 そして、また休みが取れたので、ぷらりと実家に帰ってきたようです。

 いつもなら、これだけで部屋を出て行くのですが、今回は、おかしなことを訊いてきました。
 「あのさ、私の名前は、なんでSって付けたんだっけ?」
 「なんで、また?」
 「うん、ちゃんと知りたくなって」

 娘の名前は、漢字1字で 「S」。
 仮名では、2文字。


 「患者さんに、『昭和っぽい名前ね』 って言われた」
 娘は、看護師です。

 確かに、言われてみれば、平成~令和のキラキラネームではありません。
 どちらかと言えば、古風な名前です。
 頭に 「お」 を付けると、時代劇に出て来そうな名前でもあります。

 でも、本人は気に入っているようです。
 「同じ名前の人に会ったことあるか?」
 「ない」
 「だろう! とっておきの名前を付けてやったんだ」

 ということで、漢和辞典を引っ張り出してきて、漢字の意味を詳しく伝えてやりました。

 「へえ、そうだったんだ」
 と、納得した様子で、部屋を出て行きました。


 その昔、僕もオヤジに、名前の由来を訊いたことがありました。
 でも、返ってきた言葉にガッカリした記憶があります。

 「なんとなく、響きがいいから」


 だから、ついでに自分の名前も漢和辞典で引いてみました。
 【淳】 ジュン
 水をめぐらしそそぐ意。借りて 「あつい」、すなおの意。

 人情に厚く、真心がある。
 ありのままで、飾り気がない。
 そんな意味もありました。

 「名は体を表す」 ともいいます。
 名に恥じぬよう、これからも生きて行こうと思います。

 
 What's your name? 
  


Posted by 小暮 淳 at 11:24Comments(0)つれづれ

2024年03月17日

とんとんとんからり


 「あれって 『なか卯』 ですよね!?」
 「さっそく 『なか卯』 へ行ってきました」

 あの時、ブログを読んだ人たちから声をかけられました。
 何のことかって?
 ええ、うどん派の僕が、足しげく通った 「鴨そば」 の話です。
 (2024年1月14日 「鴨が葱を背負って来た!」 参照) 


 別に 「なか卯」 の回し者でも、熱烈なファンというわけではないんですけどね。
 たまたま、あの味が僕の口と合ったということです。
 それと、我が家から一番近い外食チェーンだというだけです。

 なので今でも、ときどき小腹がすくと、仕事の手を休めて、サクサクッと食べに行きます。
 その手軽さが気に入っています。


 「鴨そば」 は、期間限定メニューなので、すでに販売は終了しています。
 が、新メニューが登場しました!
 まず、その意表を突くネーミングに惹かれました。

 「豚から丼」
 (とんからどん) と読むそうです。
 リズミカルで、いいですね。


 「鶏から丼」 もありますが、こちらは想像が付きます。
 でも、「豚から丼」 ですよ!?
 豚肉の唐揚げの丼物なんて……
 奇をてらってるだけじゃないの?
 と、怖いもの見たさの好奇心から注文してみました。

 まずは、見た目で 「おっ!」 とビックリ。
 完全に、親子丼であります。
 でも豚肉ですからね、親子ではありません。
 完全に、他人です。

 で、ふわふわ卵の中から、箸で豚肉をつまみ上げました。
 「おおっ!」 っと、二度ビックリ。
 鶏のから揚げのような肉のかたまりが出てくると思いきや、意表をついて、ペラッとしています。

 カリッと揚げた豚バラ肉のスライスです。

 これにブラックペッパーの風味が加わり、とじた卵の甘みと相まって、ごはんが進みます。

 「う~ん、いけずぅ~」
 と年甲斐もなく、まる子語を発してしまいましたとさ。


 そんな話をしていたら、小腹がすいてきましたよ。
 時計を見れば、もう昼じゃありませんか!?

 ♪ とんとんとんからりと豚から丼 ♪
 (古い!)

 なんて口ずさみなから、切りのいいところで出かけましょうかね。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:01Comments(2)つれづれ

2024年03月16日

尻焼温泉 「白根の見える丘」④ ~あの日の唄が聴こえる~


 温泉ファンに訃報です。

 尻焼温泉(中之条町) 「白根の見える丘」 のご主人が、今年1月に亡くなられました。
 それに伴い、旅館も閉館しました。

 あまりのショックに、しばし呆然としてしまいました。


 ご主人との出会いは、20年以上前になります。
 旧六合(くに)村からパンフレット制作の依頼を受け、泊まり込みで取材をしました。
 その時、お世話になったのがご主人でした。

 当時は、まだ 「白根ハイム」 という名の宿でした。


 いつお会いしても、トレードマークの作務衣とバンダナ姿が似合う、カッコイイ兄貴のような人。
 酒が好きで、ギターが好きで、すぐに僕らは意気投合して、仕事もそっちのけで陽の高いうちから呑んだくれていました。

 2010年に 『群馬の小さな温泉』(上毛新聞社) を出版した時も、その後の朝日新聞に 『湯守の女房』 を連載した時も、「泊まらなくっちゃ、取材は受けないよ」 と言って、呑み明かすほどの酒好きでした。
 (当ブログの 「カテゴリー」 より 『湯守の女房』(15) を検索。閲覧できます)


 ああ、世の中は、なんて無常なんでしょう……。
 また1つ、個性豊かな温泉宿が消えてしまいました。

 「草津白根山(2,171m)は草津温泉からは見えない。僕が知る限りは、唯一うちが白根山を望める宿だから、ストレートな名前に変えたんですよ」
 と語った、ご主人自慢の露天風呂は、一切の人工物は見えない丘の上。
 見えるのは、どこまでもつづく山並みと、その上にポッカリと浮かぶ白根山の白い山肌だけ。


 ああ、もう一度、あの湯舟から白根山を望みたかった……。

 湯上りには、女将さんの絶品手作り豆腐が待っていました。
 これを岩塩とオリーブオイルでいただきなから、ウィスキーを水割りでやるのがスタイル。
 水割りの水は、ご主人が往復4時間もかけて汲んできた名水です。

 ああ、なんという至福の時間だったのだろう……。


 酔いが回ってくると、主人はギターを取り出します。
 歌うのは、決まって吉田拓郎でした。
 2人で夜が更けるまで、ギターをかき鳴らし、歌い続けた遠い日の思い出が、走馬灯のようにめぐります。

 ありがとうございました。
 大変お世話になりました。

 ご冥福をお祈り申し上げます。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:30Comments(2)温泉地・旅館

2024年03月15日

じっさんずラブ? ふたたび


 モテます!
 モテまくっています!
 人生最大のモテ期が到来したようであります。

 でも、やっぱり、異性ではありません。
 全員、“じっさん” です。


 昨日、高崎市内で講演を行ってきました。
 テーマは、温泉。

 会場に着くなり、職員が、
 「先生と写真を撮りたいという人がいるんですが、よろしいですか?」
 断る理由もないので、職員に導かれてホールの中へ。
 まだ開演30分前だというのに、7~8人の受講者が席に付いていました。

 「こちらの方です」
 と紹介されたのは、年の頃、どうみても70歳以上の男性です。
 「ありがとうございます。どうしてもと知り合いに頼まれたものですから」
 と男性は、職員にスマホとデジカメを渡しました。

 「?」
 僕が不思議そうな顔をしていると、
 「カメラは知人のもので、スマホが私のです」

 「ハイ、チーズ!」


 すると今度は、手に新聞を持った男性が近寄ってきました。
 やはり、シニア男性です。
 「先生、この記事、読みました。今日、お会いできるのを楽しみにしていました」
 男性が持っていたのは、先月から連載が始まった読売新聞の記事でした。

 するとすると、間髪を入れず、もう一人の男性が、
 「トリビア、観ています。今回は鹿沢温泉でしたね」
 と、これまた高齢者です。
 トリビアとは、ときどき僕がリポーターをしている群馬テレビ 『ぐんま!トリビア図鑑』 のことです。


 とにかく、会場に着くなり、その熱烈歓迎ぶりに、少々面食らってしまいました。
 が、この手のファン(?)なら珍しくありません。
 でも、ここまでは、まだ序奏に過ぎなかったのです。
 このあと、極め付きの 「じっさんずラブ」 が登場します。
 (じっさんずラブについては、2024年2月19日の 「じっさんずラブ?」 をご覧ください)


 開演時刻になり、僕は壇上に立ちました。
 小さなホールは、満席状態です。
 定員30名のところ、50人近い応募があったといいます。
 主催者は、イスを増やして対応したようです。

 うれしい限りであります。
 講師冥利に尽きます。

 見渡せば、女性は全体の3分の1~4分の1です。
 大半が男性。
 しかも、ほとんどが60代以上のシニア層です。


 と……
 ギェッ、ギェギェギェーーー!!!

 最前列、左側の席。
 今日もいます!
 前回もいました。
 前々回も、そのまた前も……

 昨年秋頃から高崎市内で講演やセミナーがあると、必ず会場にいるシニア男性です。
 前回、お会いした時に少しだけ話をしました。

 「いつもありがとうございます」
 「はい」
 「確か、前回も来られていましたよね?」
 「はい」
 「今日の話も内容は、前回と同じですよ」
 「はい」
 「いいんですか?」
 「はい」

 かなりシャイな方です。
 うれしいんですけどね、僕には不思議でなりません。
 だって、毎回毎回、同じ話を聞きに来るんですよ。
 しかも会場が毎回違うのに、どうして、講演場所が分かるんでしょうか?

 「今日ここで講演することが、よく分かりましたね?」
 「はい、……調べました」
 たぶん、ネットの検索を駆使したんでしょうね。

 これまた講師冥利に尽きます。
 ただただ頭が下がります。


 講演中、僕は、その男性が気になって仕方がありません。
 もしかして、じっさんずラブ?
 いえいえ、そんなんじゃありませんって!(汗)

 男性は、今回も黙々とメモを取っていました。
 とっても熱心な方です。
 それだけ、温泉が好きなんでしょうね。


 今年の講演活動は、まだ始まったばかりです。
 どんな出会いが待っているのでしょうか?
 次回の講演が楽しみです。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:56Comments(0)講演・セミナー

2024年03月14日

「イワナイコト」 とは?


 「あなたは幸せですか? 不幸ですか?」
 と問われれば、僕は、
 「不幸ではありません」
 と答えます。

 “不幸ではない” = 必ずしも “幸せ” じゃないような気がするからです。

 ただ、日々の中に、幸せを感じる瞬間ならあります。
 それらは、すべて、人と触れ合っている時です。
 家族や友人、知人、読者、聴講者……

 残念ながら、モノやお金で幸せを感じたことはありません。


 幸せを感じる瞬間の1つに、「弟子の会」 というがあります。
 かれこれ8年前に発足した、吞兵衛の集まりです。
 メンバーは、僕のことを勝手に 「先生」 とか 「師匠」 と呼ぶ温泉好きの面々です。

 発足といっても正式な会員規約などはありません。
 2カ月に1回、呑み屋に三々五々集まって、バカ話をして帰るだけです。


 最初の頃は、温泉の話もしていたんですけどね。
 最近は、ただのバカ話を延々としているだけです。
 それが、不思議と心地いいんです。

 テーマがツボにはまると、笑いが止まりません。
 死んじゃうんじゃないかと思うほど、笑って、笑って、笑い転げて、しまいには涙まで流れます。
 みんな笑い過ぎて、「腹が痛い」 「後頭部が痛い」 と、翌日になって後遺症が出る始末です。


 先日、今年2回目の 「弟子の会」 がありました。
 まぁ~、弟子たちですからね、みんな僕のブログは読んでくれているわけです。

 「じっさんずラブ、笑いました」
 「“ひかがみ” 知りませんでした」
 「カメの恩返し、面白かった」
 「今度、塩付きの樽酒、買います」
 なんてね。
 必ず毎回、ブログネタで盛り上がります。


 「先生、あれは本当に怖かった!」
 「イワナイコト?」
 「きゃー、夜中、トイレに行けなかったんだから」
 「でも本当の話だから」
 「先生が呪われて、死んじゃうんじゃないかと心配しました」
 「大丈夫だよ、ほら、こうして生きている」
 「はい、翌日のブログが更新されていて安心しました」
 (2024年2月16日 「トイレの怪」 参照)

 それからは、みんなで 「イワナイコト」 探しが始まりました。

 「いったい、何のことですかね?」
 「じっさんずラブじゃないんですか?」
 「先生、ちゃんと胸に手を当てて考えてみてください。やましいことは、ありませんか?」

 と言われても、まったくもって心当たりがありません。


 もしかして、イワナイコトとは、この 「弟子の会」 のことですかね?
 こんなにも楽しい仲間と時間を、一人占めしていることへの神様のやっかみですか?

 「イワナイコト」 とは?


 この謎解きは、まだまだ続きそうですね。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:03Comments(0)酔眼日記

2024年03月13日

「膕」 の相棒


 たびたび、このブログでも紹介してきた 「膕」。
 読者のみなさんは、もう読めますよね。

 「月」 に 「國」 と書いて、「ひかがみ」 と読みます。

 膝(ひざ)の裏のくぼんだ箇所の呼称です。
 僕は、この部位が好きで、“ひかがみフェチ” であることを告白し続けています。
 
 興味がある方は、下記のブログを検索してみてください。
  ●「膕」 の誘惑  2023年11月10日
  ●「膕」 の逆襲  2023年11月20日
  ●「膕」 の呪縛  2024年1月9日


 昨年11月の掲載以降、読者から大変反響がありました。
 「知らなかった」 「そんな呼び名があったんだ」 「漢字が難しい」 という声にまざって、こんな意見が寄せられました。

 「では、肘(ひじ)の裏側は、なんて言うんですか?」


 ですね!
 僕も、うっかりしていました。
 興味がないものだから、考えたこともありませんでした。

 だって、肘の裏側なんて見ても、なんも感じないもの(笑)。


 さて、なんと呼ぶのでしょうか?
 さっそく、調べてみました。

 「肘窩(ちゅうか)」 です!

 えっ、なんだよそれ!って思いませんか?
 肘窩の窩は、「あな、くぼみ」 という意味です。
 そのままではないですか!
 ちょっと納得がいきません。

 だったら 「膕」 だって、別名 「膝窩(しっか)」 という呼び名がありますもの。
 ちなみに、脇の下は 「腋窩(えきか)」 といいます。


 それに比べて 「膕」 は、いいですね。
 文学的で美しい!

 肘の裏側は、 「膕」 の相棒です。
 「肘窩」 なんていう医学的専門用語ではなく、「膕」 のように漢字一字で表現してもらいたいものです。


 もし 「肘窩」 の文学的呼称を知っている人がいたら、教えてください。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:20Comments(0)つれづれ

2024年03月12日

倉渕川浦温泉 「はまゆう山荘」➄


 塚越育法支配人に、初めてお会いしたのは15年前のこと。
 平成21(2009)年9月、拙著 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) の初版が発行された年でした。

 その年の3月、「群馬県内に新たな温泉地が誕生」 という知らせを受け、急きょ、取材に行き、著書に追加掲載した記憶があります。


 「はまゆう山荘」 は、昭和62(1987) 年5月に神奈川県横須賀市の保養施設 「横須賀市民休暇村」 として開館しました。
 施設名は、横須賀市の花 「浜木綿(ハマユウ)」 に由来します。
 (なんで横須賀市なのかについては、拙著をお読みください)

 もちろん、この時は、まだ温泉宿ではありません。
 きっかけは、平成18(2006) の市町村合併でした。
 旧倉渕村は高崎市になり、施設も高崎市の所有となりました。
 
 これを機に、温泉の掘削をし、新たに 「倉渕川浦温泉」 としてリニューアルオープンしました。


 塚越さんは、施設の開館時から勤務してきた生え抜きの支配人です。
 当時、温泉が湧いた喜びを、こう語っていました。

 <「以前は軽井沢をはじめ、周辺観光地への拠点としての利用客が多かったのですが、温泉が湧いてからは湯を目当てにくる方が増えました。ナトリウム・カルシウム塩化物・硫酸塩と三種混合の湯は、成分が濃いわりには浴感がやわらかく、肌がツルツルになると大変好評です。」>
 (月刊 「Deli-J」 2009年10月号 『源泉巡礼記』 より)

 時はめぐり、昨年は泉質が変わったということで、テレビの取材でお会いしました。
 “県内唯一の含鉄泉”
 その喜びを語る塚越さんを、僕がリポートしました。


 そんな勤続37年になる 「はまゆう山荘」 の生き字引、塚越支配人が今月15日で定年退職を迎え、一線を退くという記事が地元紙に大きく掲載されました。
 写真の塚越さんは、いい笑顔をしています。
 勤め上げた満足そうな笑顔です。

 長い間、大変お疲れさまでした。
 そして、お世話になりました。
 ありがとうございます。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:09Comments(2)温泉地・旅館

2024年03月11日

山は富士、酒は……


 ≪酒の名のあまたはあれど今はこはこの白雪にます酒はなし≫ 若山牧水


 「おーい、ジュン! ちょっと、来い!」
 子どもの頃、晩酌をしているオヤジに、ときどき呼ばれました。
 居間に行くと、奇妙な恰好をしているオヤジがいました。

 片手の親指と人差し指で、自分の鼻をつまんでいるのです。

 「何してるの?」
 と問えば、
 「つまみが無いから、鼻をつまんでいるんだ!」
 と、立腹の様子。

 察するに、酒を呑み出したがオフクロの料理が、なかなか出て来ないことにイライラしているようです。
 そして僕に、こう言うのでした。

 「塩、持って来い!」


 台所に行って、オフクロに告げると、
 「まったく、しょうがないね。これを持って行って」
 と言って、塩が盛られた小皿を渡されました。

 オヤジは、この小皿の塩をつまむと、上手に手の甲に乗せ、ペロッと舐めました。
 そして、酒をキュー。
 たま、塩をペロッ。
 酒をキュー。

 子ども心に、大人とは不思議な生き物だと思っていました。
 が、大人になると、やっぱり僕も、その不思議な生き物になっていたのです。


 先日、スーパーマーケットに立ち寄った時のこと。
 日本酒の棚に、驚きの商品を見つけました。

 「白雪 樽酒」

 ほほう、牧水が愛した酒じゃないか~!
 と手に取ると、あまり見かけないコピーが書かれていました。

 <塩付きキャンペーン 実施中>

 なに?
 塩付きだ?

 と、コップ酒を模した容器のフタを、のぞき込むと……

 おっ、おおおおおおーーーー!!!
 本当だ、確かに塩の小袋が入っています。
 しかも、ブランド品の 「伯方の塩」。
 さらに、焼塩です。


 キャンペーンの但し書きには、丁寧にもイラスト入りで、こんなことが書かれていました。

 【ちょっとイキな飲み方】
 手に塩をのせて、少しずつなめながらお楽しみください。
 

 ということで即行、買って帰り、遠い日のオヤジを真似て、塩をつまみに呑み始めました。
 ペロッ、キュー、ペロッ、キュー……

 うまい!
 うま過ぎる!
 こりゃ、やっぱ、クセになるわ!

 もしかしてオヤジは、オフクロの手料理で呑む酒よりも、この “塩呑み” が好きだったのではないでしょうか!?
 きっと牧水さんだって、そう。
 世の吞兵衛たちは、一番おいしく酒を呑む術を知っていたんだと思います。


 まだの人は、ぜひ、お試しください。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:13Comments(0)酔眼日記

2024年03月10日

月夜野温泉 「みねの湯 つきよの館」⑯ ~湯の舟に乗って~


 温泉ファンに、悲しいお知らせです。
 こんな手紙が届きました。

 <拝啓 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。さて、突然ではございますが、二月末日をもちまして閉館する運びとなりました。長きにわたるご支援に心より感謝申し上げますと共に、ご迷惑をお掛け致しますことを深くお詫び申し上げます。>

 差出人は、月夜野温泉 (みなかみ町) の一軒宿 「みねの湯つきよの館」 の女将、都筑理恵子さんです。


 ただただ、残念でなりません。
 僕が温泉ライターを名乗るようになって、最初に僕のことを 「先生」 と呼んでくれたのが女将でした。
 あれから20年以上、仕事とプライベートで一番訪れた温泉宿と思います。


 いったい僕は、今までに何軒の宿を取材して、何軒の宿の閉館を見て来たのでしょうか?
 20軒以上になると思います。
 その中には、「みねの湯つきよの館」 のような一軒宿が、いくつもあります。

 一軒宿の廃業は、イコール、温泉地の消滅につながります。


 その昔、人々は、そこに “湯” があるから訪ねていました。
 それが今は、どこにでも “湯” があり、わざわざ訪ねる意味がなくなったといいます。

 本当でしょうか?

 なんだか、おかしな世の中になりました。
 人間の都合に、“湯” を合わせるなんて……

 快適、便利を求める世の中。
 不便で簡素な宿は、時代の中で姿を消しざるを得ないのでしょう?


 「みねの湯つきよの館」
 いい宿でした。
 大好きな宿でした。
 女将をはじめ、スタッフがみんな、あったかかった~!

 お疲れさまでした。
 ゆっくり休んでください。
 また再開し、再会する日が来ることを待ち望んでいます。



 <月夜野盆地を見下ろす天空の浴室からは、掛け値なしの絶景の展望が広がる。まるで湯の舟に乗って、遠く南の国まで飛んでいけそうな気分になった。>
 (『みなかみ18湯』 下巻 より)
  


Posted by 小暮 淳 at 10:56Comments(6)温泉地・旅館

2024年03月09日

晴れ、ときどき牧水


 牧水は、群馬で何という地酒を呑んだのだろうか?

 最初は、そんな疑問と好奇心からでした。
 昨年11月、高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 にてスタートした不定期連載 『牧水が愛した群馬の地酒と温泉』。
 副題には ≪令和版 みなかみ紀行≫ と付いています。


 歌人の若山牧水 (1885~1928) は、群馬県を8回訪問して、延べ約60日間滞在しています。
 中でも著書にもなった有名な紀行文が 『みなかみ紀行』 (大正13年初版) です。
 この間、15日滞在して、群馬県内の9つの温泉に入っています。

 しかも牧水は、桁違いの酒豪です。
 毎晩、一升の酒を呑み明かしました。


 自称 “令和の牧水” を名乗る僕としては、その疑問を解き明かさないわけにはいきません。
 どこが “令和の牧水” なのかって?
 はい、群馬の温泉と地酒をこよなく愛しております。

 その証拠に、僕は県内4温泉地の温泉大使と、「ぐんまの地酒大使」 を仰せつかっております。
 ということで、僕が書かずして、誰が書く!?
 という使命感に駆られたのであります。


 前回の第1話では、スタート地点の沼津 (静岡) ~佐久 、軽井沢 (長野県) までの足取りを追いました。
 そして、牧水が呑んだであろう地酒にもたどり着きました。

 ズバリ!
 僕の推理は、武重本家酒造 (佐久市) の 「御園竹(みそのたけ)」 であります。

 『よき酒とひとのいふなる御園竹 われもけふ飲みつよしと思へり』 
 と、牧水自身が詠んでいますから、ほぼほぼ間違いないと思います。


 ということで昨日、第2話の取材に行ってきました。
 牧水は、軽井沢から草軽軽便鉄道に乗って、いよいよ嬬恋 (群馬県) へ。
 そこから草津温泉 (草津町) ~花敷温泉 (中之条町) ~沢渡温泉 (中之条町) ~四万温泉 (中之条町) へと向かいます。

 どの宿に泊まったのか?
 何という銘柄の地酒を呑んだのか?

 その足取りを追いました。


 掲載は4月5日号の予定です。
 乞う、ご期待!
  


Posted by 小暮 淳 at 11:55Comments(0)執筆余談

2024年03月07日

カメの恩返し


 友人から、こんなメールが届きました。
 <伊豆へ行ってきました。無事にカメちゃんたちを届けました。若干感傷的になったけど、狭い水槽から広い世界へ彼らが行けて良かった。>

 ブログを読んでいる読者なら、何のことか分かりますよね。
 先日アップした、大きくなってしまったミドリガメの話の続報です。
 (2024年3月5日 「カメとの別れ」 参照)

 このメールが届いたとき、僕の妄想が始まりました。


 昔々、令和の世のこと。
 あるところに、心優しい一家が暮らしていました。

 主人は町はずれで、小さいな工場を営んでいました。
 ある夜のこと、工場の戸を叩く音がしました。

 コツン、コツン、コツン

 「こんな夜遅くに、誰だろう?」
 主人が戸を開けると、外には誰も居ません。
 「なんだ、気のせいだったのか……」
 と、戸を閉めようとした時です。

 「私です。ご主人さま」
 蚊の鳴くような小さな声がしました。
 足元を見て、ビックリしました。
 そこには緑色をした大きなカメがいたのです。

 「ご主人さま、お懐かしゅうございます」
 「あ、お前は!?」
 「はい、長年、飼っていただいたミドリガメでございます」

 カメは涙を流しています。
 つられて主人も涙を流し、カメに抱き着きました。

 「おお、元気だったのか! 今日は、どうして、ここに?」
 「はい、お迎えに上がりました」
 「この私をかい?」
 「はい、お連れしたいところがあります。さあ、私の背中にお乗りください」
 と言うと、カメはクルリと向きを換えました。


 ノッソ、ノッソ、ノッソ……
 カメは歩き出しました。

 「えっ、このスピードなの? 空を飛んだりしないの?」
 「はい、私はカメですから、歩みは遅いのです」

 ノッソ、ノッソ、ノッソ……
 しばらく行くと、前方に横たわる白い生き物がいます。
 よく見ると、ウサギです。

 「ウサギさん、お先に失礼しますよ」
 カメは、そう言うと、寝ているウサギを横目に、ゆっくりと追い越しました。


 やがてカメは、こんもりとした竹林の中へ入って行きました。
 「ご主人さま、着きましたよ」
 「着いたよって、ここは竹林の中じゃないか? てっきり私は、海の中の竜宮城へ連れて行ってくれるのかと思ったよ」
 「いえいえ、私はウミガメじゃありませんので、泳げません」
 「で、ここは、どこなんだね?」

 暗闇の中でカメから降りると主人は、あたりを見渡しました。
 遠くの方に、ぼんやりと明かりが見えます。

 「あそこです。ご案内いたします」
 「ん? いったい、ここは、どこなんだい?」
 「はい、スズメのお宿です」
 「スズメのお宿? 私はスズメなんて、助けてはいないよ」
 するとカメは、言いました。
 「難しいことは考えないでください。これは、おとぎ話です」

 そう言って、宿の中へ入って行きました。


 「ようこそ、ご主人さま~!」
 色とりどりに化粧をしたスズメたちに出迎えられました。
 「どうぞ、日頃のうっぷんを晴らして行ってくださいませ」
 そう言うとスズメたちは、料理を運び、踊りを披露しました。

 「これは、たまげたね。こんなところに、こんな店があるなんて!」
 「ご主人さま、ここは、お店ではありませんよ。私が今日のために、ご主人さまだけに用意をしたパラダイスででございます。どうぞ、ゆっくり楽しんでいってくださいませ」

 おいしい料理とお酒を呑んだ主人は、上機嫌です。
 「なあ、カメよ。なんで、お前は私に、ここまでしてくれるのかい?」
 カメは言いました。
 「ほんの恩返しでございます」
 「恩返し?」
 「はい、私は、ご主人さま一家のおかげで、広い世界へ行くことができました。ありがとうございます。その恩返しでございます」


 するとスズメたちが、主人の前に大きな箱と小さな箱を2つ持ってきました。
 「これは、なんだい?」
 「はい、私からのプレゼントです」
 「でも2つあるね?」
 「はい、大きなツヅラと小さなツヅラ、どちらにいたしますか?」
 カメが言うと、主人は即答しました。

 「こんな大きなのは持てないよ。私は小さいツヅラで十分だ」
 「そう言うと思いましたよ、ご主人さまは。欲がないお方ですからね。真面目で正直者で、一生懸命に家族のために働いて、人が良くて、だまされてばかり。それでも困っている人がいると、自分のことは後にして、面倒を見てしまう、お人よし。でも、そこが、ご主人さまのいいところなんでよね。私は、そんなご主人さまに育ててもらって、大変幸せ者でした。どうぞ、小さいツヅラをお持ちください。あらかじめ小さい方に大金を詰めておきましたから」
 

 その後、主人の工場は建て替えられて、あれよあれよのうちに大会社の社長になったとさ。
 おしまい。

 Mさん、そうなるといいですね。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:47Comments(0)つれづれ

2024年03月06日

難読温泉地名


 あれは昨年聴講した、さる大学教授の講演会でのこと。
 テーマは、温泉でした。

 話が群馬の温泉に触れた時でした。
 教授は、鹿沢温泉のことを 「しかざわ」 と発音しました。
 聴講者のほとんどが群馬県民ですから、怪訝な顔をしました。

 正しくは 「かざわ」。
 群馬の温泉ファンなら難なく読める温泉地名なのに、読み間違えたことが不思議でした。
 「なんだよ、行ったこと、ねーのかよ」
 そんな声が聞こえてきました。

 この教授は、県外在住者だったのです。


 確かに、行ったことがなければ 「鹿沢」 を 「しかざわ」 と読んでしまっても仕方ありませんね。
 温泉地に限らず、地名には、その土地独特の読み方というのがあります。
 ということで、群馬県内の難読温泉地名をいくつか挙げてみました。

 みなさんは、正しく読めますか?

 ①湯檜曽 (みなかみ町) ②奈女沢 (みなかみ町) ➂真沢 (みなかみ町) ④湯宿 (みなかみ町) ➄沢渡 (中之条町) ⑥応徳 (中之条町) ⑦半出来 (嬬恋村) ⑧梨木 (桐生市) ⑨猪ノ田 (藤岡市)  ➉向屋 (上野村)
 


 ところで昨晩放送の 『ぐんま!トリビア図鑑』 は、ご覧になりましたか?
 前出の難読温泉地名が舞台です。
 見逃した人は、再放送をご覧ください。


         『ぐんま!トリビア図鑑』
         温泉王国ぐんま Vol.6
          「山の湯 鹿沢温泉」

 ●放送局  群馬テレビ (地デジ3ch)
 ●再放送  3月9日(土) 10:30~ 11日(月) 12:30~



 <正解>
 ①ゆびそ ②なめざわ ➂さなざわ ④ゆじゅく ➄さわたり ⑥おうどく ⑦はんでき ⑧なしぎ ⑨いのだ ➉こうや
  


Posted by 小暮 淳 at 11:31Comments(2)温泉雑話

2024年03月05日

カメとの別れ


 昔、といっても小学生の頃ですから50年以上も昔のこと。
 昭和40年代の話です。

 放課後、小学校の正門を出ると、ときどき物売りのおじさんがいました。
 教材や文房具を売る人は、きちんとした身なりをしていましたが、なかには怪しいおじさんもいました。
 おもちゃや手品もあれば、ヒヨコやウサギなどの小動物を売っている人もいました。

 子どもたち、特に男の子に人気だったのがカメです。
 小さなゼニガメ (クサガメやイシガメの幼体) 。
 いくらだったかは忘れましたが、僕も飼っていた記憶があります。


 でも、一番欲しかったカメは、ミドリガメでした。

 たぶん高かったんでしょうね。
 クラスでも飼っている子は、いませんでしたから。
 誰もが、一度は飼ってみたい夢のカメだったのです。


 ところが!
 雑誌の懸賞に応募をしたら、なんと!
 見事に当選しました!

 どうやってミドリガメが届いたと思いますか?

 郵送でした。
 それも封筒に入ってました。
 しかもスポンジの間に、はさまっていました。

 でも、生きていたんですね。

 うれしくてうれしくて、一日中、眺めていた思い出があります。
 ただ、そのカメが、その後どうなったかは記憶にありません。
 たぶん死んでしまったんでしょうね。


 あの可愛いミドリガメが、実はアメリカ原産のミシシッピアカミミガメだと知ったのは、大人になってからでした。
 ミドリガメは、その子どもだったんですね。
 大きくなると体長25cm以上にもなるといいます。
 カメは長生きですから、飼えなくなって放たれてしまったミシシッピアカミミガメが、いま全国の池や沼で繁殖して問題になっています。

 現在は特定外来生物に指定されているので、むやみに捨てることは禁止されています。


 「今度、家族で伊豆へ行くことになった」
 友人との雑談中でした。
 「旅行?」
 「うん、旅行を兼ねてだけど、カメを届けに行くんだ」
 「カメ?」
 「ああ、ミドリガメ2匹。20年も飼っていたんだけど、大きくなり過ぎちゃって」

 なんでも友人は、ネットでカメを引き取ってくれる動物園を探し出したらしい。
 どうせなら家族全員で、お見送りをしようということになったようです。


 「息子がさ、今になって別れたくないなんて言い出すんだよ」
 息子さんは、すでに社会人です。
 「そしたらね、女房が言うわけよ。あんたは、一度もカメの世話をしてないじゃない!って(笑)」

 なんとも、ほのぼのとした家族であります。
 でも息子さんの気持ち、分かります。
 世話はしていなくても、カメだって家族の一員だったんですものね。


 春は別れの季節です。
 いろいろな別れがありそうですね。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:25Comments(0)つれづれ